October 21, 2007

H181129 東京地裁平成18年11月29日判決

H181129 東京地裁平成18年11月29日判決
<平成16年(ワ)第11928号>
(出典:ウエストロー・ジャパン)

<事案の概要>
 Y(旅行会社)が主催する南部アフリカツアー(南アフリカ共和国、ジンバブエ共和国、ボツワナ共和国への旅行)に参加してマラリアに罹患して死亡したA(旅行者)の相続人Xが、Yが事前の情報提供義務及びツアー後の注意喚起義務を怠ったと主張して、Aの死亡による損害の賠償を求めた事案である。
 なお、Yが作成したパンフレットには、「本コースは予防接種は不要です」との記載があった。また、Aの申込み後にYが送付したガイドブックには、「ツアーで訪れる地域では、マラリアの心配はありません。」との記載があった。

<裁判所の判断>
 裁判所は、まず、Yの情報提供義務違反の有無につき、
「旅行は、その計画・立案の段階から終了までの間には相当の時間的経過があり、また、旅行者の場所的移動を伴うため、旅行者が自然災害、病気、犯罪若しくは交通事故等に遭遇する危険を包含しており、特に海外旅行の場合には、当該外国の風俗・習慣、生活水準又は社会・経済体制等が日本のそれらと相違し、また、危険若しくは安全性についての考えや水準も異なるため、旅行に伴う危険は国内旅行の場合に比し一層高度なものとなること、
主催旅行契約においては、旅行の目的地及び日程、旅行サービスの内容等の主催旅行契約の内容(以下「契約内容」という。)は旅行業者が一方的に定めて旅行者に対し提供し、旅行代金も旅行業者がその報酬を含めて一方的に定めるものであり、旅行者は、契約内容や旅行代金について指示し若しくは修正を求める余地がなく、提供された契約内容・旅行代金の額を受け入れるか否かの自由しかないのが通常であること、
旅行業者は、旅行についての専門業者であり、旅行一般についてはもとより、当該主催旅行の目的地の自然的、社会的諸条件に関する専門的知識・経験に基づいて主催旅行を企画、実施するものであり、旅行者は、その主催旅行の安全性を信頼し、主催旅行契約を締結するものであるといえること
等を考えると、旅行業者は、主催旅行契約の相手方である旅行者に対し、主催旅行契約上の付随義務として、旅行者の安全を図るため、旅行目的地、旅行日程、旅行サービス提供機関の選択等について、あらかじめ十分に調査・検討し、仮にその主催する旅行に関して、社会通念上、旅行一般に際して生じ得る可能性がある各種の危険とは異なる程度の高度の発生可能性を有する格別の現実的危険が存在する場合には、当該危険に関する情報を旅行者に対して告知すべき信義則上の義務があるものというべきである。
とした。
 そして、本件において、「Yには上記信義則上の義務が生じており、Yは、本件ツアーに際して上記のような格別の現実的な危険が存在するのであれば、これを告知すべき義務を負うというべきである。」
とし、
「本件においては、本件ツアーに際してのマラリア罹患の危険性が上記のような告知を要する格別の現実的危険に当たるか否かが問題となるところ、その判断のためには、マラリア罹患の危険性の性質及び程度を検討する必要があるし、また、Yにおける告知義務違反を認定するためには、本件ツアーで訪問した場所におけるマラリア罹患の危険性について、具体的にYが予見し得るか否か(予見可能性)を検討する必要がある。」
「そして、これらの判断に当たっては、本件ツアーで訪問した場所におけるマラリア罹患者の人数のみならず、過去の同種ツアーにおけるマラリア罹患者の有無、個々の箇所を訪れた時間帯、防蚊対策等を総合的に考慮すべきである。」
として、詳細な判断を行った。
その上で、
本件ツアーで滞在、訪問した地点におけるマラリア罹患の危険性については、いずれもその可能性が極めて乏しいあるいは低いものであり、旅行一般において生じ得る各種の危険と比べて、ことさらその危険性が高いものと認めることはできないから、告知を要すべき格別の現実的な危険には当たるとは認めがたく、Yにおいて、マラリア罹患の具体的危険性に関する予見可能性もなかったものというべきであるから、Yは、Aに対して、本件ツアーにおいてマラリアの危険性に関する情報を積極的に提供する義務を有しており、これに違反したものであるとまではいうことができないと判断するのが相当である。」
とした。
 また、マラリアに予防接種は行われていないことなどから、パンフレットの記載に問題がないとしたほか、「本件ツアーにおけるマラリア罹患の可能性は極めて乏しいあるいは低いものであり、また現にY主催の南部アフリカツアーにおいてマラリアに罹患した者がいないとされている以上、マラリアの心配はない旨の記載をしたことが記載の誤りに当たるとまで認めることは相当でない。」とした。

 裁判所は、次いで、注意喚起義務違反の有無につき、まず、
「旅行業者には社会通念上、旅行一般に際して生じ得る可能性がある各種の危険とは異なる程度の高度の発生可能性を有する格別の現実的危険が存在する場合には、当該危険に関する情報を旅行者に対して告知すべき信義則上の付随義務があるというべきである。しかし、自らの健康を管理するのは本来的には旅行者自身であるし、旅行業者は医療機関ではなく、旅行終了後には、旅行者は自ら医療機関を受診することが可能であり、また受診することが通常であって、旅行業者において各旅行者の体調等について逐一状況を把握することは困難であることからすれば、旅行業者としては、原則として帰国後の体調管理に関する情報提供や注意喚起を行う義務を負うことはなく、例外的に、罹患の危険性の高い疾病等があった事実を認識した場合や、旅行者自身の申し出、問い合わせがあった場合に、適切な措置を講ずる義務を負うにとどまるものというべきである。」
とし、本件において、
「本件ツアーにおけるマラリア罹患の危険性は低く、YもAのマラリア罹患を予見することができなかったこと」、
「南アフリカ地方に渡航した者は、航空機内でキャビンアテンダント等から「質問票」が配付され、空港検疫カウンターから「あなたの健康のために」と題するカードを受領することが通常であり、Yは旅行者が「あなたの健康のために」と題するカードを受領するはずであると期待することは合理的であること」、
「YのB添乗員の第7日目、第8日目の添乗レポートに「イエローカード記入」との記載があることから、本件ツアーにおいても最終日に香港から成田空港に向かう航空機内で質問票が配付され、これへの記入が促されたものと認められること」、
「医療機関にとっては、南部アフリカからの帰国後の疾病として、マラリアの可能性が存在することは通常容易に分かり得ること」
「マラリアの診療については一般的な病院であれば可能であること」
「体調等に関してAらからのYに対する問い合わせがあったとは認めることができないこと」
「からすれば、Yが旅行者に対して、帰国後体調を崩した場合にはYに連絡を入れさせ、本件ツアーにおけるマラリア罹患の危険性を告知し、また、専門医を紹介するといった義務を負っていたとはいうことができない。」
とした。

 以上の判断からすれば因果関係についての判断は不要なはずであるが、裁判所は「念のため」として因果関係の有無につき判断している。
 まず、パンフレットの記載につき、マラリアにおいてはそもそも予防接種は存在しないこと、予防内服薬の使用も副作用との関係で医師の判断が必要とされていることなどに照らせば、仮に本件パンフレットの記載がなかったとしても、Aらが予防内服薬の摂取をしたとは考え難いとして、事実的因果関係の存在を認めることができないとした。
 次に、ガイドブックの記載につき、
「同ガイドブックがAらに送付されたのはツアーの申込み後であり、Aらが本件ガイドブックの当該記載が存在しなかった場合には、ツアーに参加しなかったとまで認めることはできない。また、本件ツアーにおいてAらがより入念な防蚊対策を採り得た可能性についても、完全な防蚊対策は不可能である以上、ホテルでの相応の防蚊対策は採られており、本件ガイドブックにも虫除け対策に関する記載は存在していたといった各事情を勘案すれば、当該記載がなかった場合には防蚊対策によりマラリアに罹患することがなかったとまでは認めることができない。最後に、帰国後C医院を受診した際に、Yにおいてマラリア罹患の可能性について告げた可能性や、最初から専門病院に行った可能性について検討するに、本件ガイドブックの記載がなければ、Yにおいて、これらの行為に至った可能性を否定することはできないから、事実的因果関係を認める余地はある」。
「しかし、マラリアは、発症時から5日間以内に投薬すれば治癒されるところ、本件では発症時である平成16年2月25日の翌日である同月26日にAはC医院を受診し、南アフリカ帰りであり、高熱を出し下痢をしていることを告知している以上、医師がマラリア罹患の可能性を判断する上で主要な事情は現に伝達されているというべきであるから、このような場合、通常、適切に診療、転医されることを予期することが相当であり、本件ガイドブック作成時に、Yにおいて、医師の診療を受けたにもかかわらず、マラリアであるとの診断がされる時期が遅れ、死亡することまでを予見することはできないというべきである。」
として、
「本件ガイドブックの記載とAの死亡との間には相当因果関係が欠けるというべきである」
とした。

<コメント>
 旅行業者は、「その主催する旅行に関して、社会通念上、旅行一般に際して生じ得る可能性がある各種の危険とは異なる程度の高度の発生可能性を有する格別の現実的危険が存在する場合」には、「当該危険に関する情報を旅行者に対して告知すべき信義則上の義務があるものというべきである。」というのが、この判決の判断枠組みであるが、「高度の発生可能性を有する格別の現実的危険」という要件が厳し過ぎるのではないだろうか。
 「旅行業者は、旅行についての専門業者であり、旅行一般についてはもとより、当該主催旅行の目的地の自然的、社会的諸条件に関する専門的知識・経験に基づいて主催旅行を企画、実施するものであり、旅行者は、その主催旅行の安全性を信頼し、主催旅行契約を締結するものであるといえること」という情報の非対称性を踏まえると、情報提供義務ないし告知義務の要件はもっと緩やかであるべきだろう。
 そして、例えば、本件ツアーにつき、「ツアーで訪れる地域では、マラリアの心配はありません。」というのは、言いすぎと思われる。感染者数や死亡率などを表示するかどうかはともかくとしても、少なくとも、感染の可能性は大きくはないとしても存在するという情報などを提供すべきであったと思われる。
 もっとも、情報が適切に提供されたとしても感染を完全に防止できるわけではないことや早期の適切な治療が必要なことなどからすれば、情報提供義務違反と死亡等との因果関係は容易には認められないことがあろうが、情報提供義務の範囲を限定しすぎるのは、消費者に対する適切な情報提供を促進しないことになり、妥当とは思えない。

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May 05, 2004

■国際関係:書籍:『デモクラシ-の帝国 -アメリカ・戦争・現代世界-』藤原帰一著

『デモクラシ-の帝国 -アメリカ・戦争・現代世界-』藤原帰一著
(岩波書店(岩波新書)、2002/09、\777(税込))
を読みました。

 現在の国際関係をどのように見るべきかについての多くの示唆がありました。
 この本は、アメリカのイラクに対する開戦よりも前に書かれたものですが、著者のいうアメリカ「帝国」はますます増長しているように見えます。

 著者の結論は、「帝国に向かってしまったアメリカを国際主義と国際協力のなかに引き戻すための、われわれの努力が求められる」(204頁)、「いま求められるのは、・・・、国連機構を再編成し、その機能を強化することである」ということのようです。

サイト上の書評などを探してみました。

朝日新聞:書評:音好宏(上智大助教授)
http://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=2509
読売新聞:書評:大澤真幸 (京都大学助教授)
http://www.yomiuri.co.jp/bookstand/syohyou/20021117ii09.htm
東京新聞:著者インタビューなど
http://www.tokyo-np.co.jp/doyou/text/d74.html
東京大学:研究者紹介
http://www.adm.u-tokyo.ac.jp/IRS/IntroPage_J/intro67637126_j.html

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May 01, 2004

■雑学:台風の名前

FLN (Fujita Law News) 2003.10.13 (No.1)からの転載です。

 アメリカでハリケーンのイザベルの被害が出ていましたが、アメリカでは、アルファベット順で人名が使われていますね。
 ネットで調べると、以下のサイトなどがありました。

ハリケーンの名前の不思議!
http://www1.odn.ne.jp/~cbt62240/hatsu/HATSU2.htm

 台風については、日本国内では番号で呼ばれているが、CNNなどでは、名前が付いていますね。
ネットで調べると、以下のサイトなどがありました。

台風のアジア名
http://www.kishou.go.jp/know/typhoon/asianame/ty_name.html
台風の名前
http://nt.sakura.ne.jp/~kishou/wtopics/asianname.html

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■民事:相続と遺留分

FLN (Fujita Law News) 2003.11.16 (No.2)からの転載です。

 先日、妻に全財産を与えるという遺言(自筆証書遺言であり、私が作成に関与したものではありませんでした。)があり、遺留分が問題になっている件の調停で、調停が成立するのが難しいだろうと思っていた件で、急遽調停が成立しました。
 調停成立後に必要となる登記のための必要書類のことまでを考えていませんでしたので、調停成立後に相手方に協力をお願いしました。
 幸いにも協力が得られ、登記が無事完了しましたが、準備不足を反省しました。

 ところで、遺留分とは、遺言によっても奪えない権利のことです。
 例えば、Aさんが死亡し、妻がBさん、子がCさん、Dさんとします。Aさんは遺産のすべてをBさんに与えるという遺言をしたとします。
 この場合でも、Cさん、Dさんには遺留分があります。つまり、法定相続分(4分の1)の半分である8分の1については、Cさん、Dさんは、それぞれ遺留分減殺請求と言って、遺産の8分の1を請求することができます。
(なお、相続人の範囲によって、請求できるかどうか、請求できる割合などが異なります。)

 なお、以前に、ある弁護士が、弁護士が遺言の作成に関与する場合で遺留分を侵害するような遺言を作るのはけしからんと言っていたことがありました。
 しかし、私はその意見にただちに賛成はしませんでした。というのは、遺留分を侵害する遺言であっても、遺留分減殺請求をするかどうかは本人の自由だからです。不満があれば、遺留分減殺請求をすれば足りるわけです。

 なお、遺留分減殺請求権は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があることを知った時から1年で時効により消滅するから、注意が必要です。

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■民事:成年後見

FLN (Fujita Law News) 2003.10.13 (No.1)からの転載です。

 家庭裁判所は,精神上の障害(痴呆,知的障害,精神障害など)によって,判断能力を欠く常況にある人については後見開始の審判を,判断能力が著しく不十分な者については保佐開始の審判を,判断能力が不十分な者については補助開始
の審判をすることができます。

 高齢化社会の進展などに伴って、これらの手続が重要になっています。

 最高裁判所の下記サイトが参考になります。書式や記載例も掲載されています。
http://courtdomino2.courts.go.jp/T_kaji.nsf/ea145664a647510e492564680058cccc/71a3ffe3792b695b49256b6500335999?OpenDocument

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■医療:書籍、『患者学のすすめ』

FLN (Fujita Law News) 2003.10.13 (No.1)からの転載です。

 鶴見和子・対話まんだら 上田敏の巻『患者学のすすめ』(藤原書店、2003.7)
を読みましたが、非常におもしろいので一気に読めました。

 知的刺激に充ちています。キーワードは、新しいリハビリテーション、人間らしく生きる権利の回復、想的患者は自己決定権を行使する、自己決定能力に裏づ けられた自己決定権、専門職の役割、普遍的法則と個別性などです。

 すぐれた社会学者・患者と、すぐれた医師・医学者の対話から、学ぶことが多かったです。ここ数年に読んだ本の中で最も学ぶことが多かった本の1つになります。

 また、上田氏が自己決定権について述べているところは、僭越ながら、「これは本物だ!」と思いました。医師が自己決定権について述べたものの中では秀逸だと思います。

 患者の方・潜在的患者の方々(つまり、すべての人々ですが。)、医師など医療従事者の方々、法律家の方々に、この本を強く勧めたいと思います。

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■雑学:確率、『確率で言えば ―日常に隠された数学』

FLN (Fujita Law News) 2003.12.21 (No.3)からの転載です。

『確率で言えば ―日常に隠された数学』
[原書名:ONCE UPON A NUMBER : The Hidden Mathematical Logic of Stories〈Paulos, John Allen〉 ]
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9974471737
ISBN:4791758692 257,8p 19cm(B6) 青土社 (2001-03-20出版)
パウロス,ジョン・A.(Paulos,John Allen〉・松浦俊輔【訳】
[B6 判] NDC分類:417.1 販売価:\2,400(税別)
の224頁に、以下のような話が出ています。

ある男がある女にこう尋ねる。
「私が真なる命題を述べればあなたの写真をくれ、私が偽なる命題を述べれば写真をくれないと約束してくれますか」。
女は社交辞令の軽い求めろ思って約束する。
男はこう言う。
「あなたは私にあなたの写真をくれないし、私と寝ることもない」。

さて、この場合、彼女が約束を守るためには、どうしなければいけないでしょうか?

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■民事:過労死

FLN (Fujita Law News) 2003.12.21 (No.3)からの転載です。

 過労死が多いようですが、皆さんは大丈夫でしょうか。
 過労死の労災認定については、平成13年12月12日付けで改正された「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」があります。
 例えば、
http://www.campus.ne.jp/~labor/hoken/nintei/nou-sin_rousainintei.html
に掲載されています。

 過重負荷は、労働時間、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交替制勤務・深夜勤務、作業環境(温度環境・騒音・時差)、精神的緊張を伴う業務などの要因によって判断され、このうち、労働時間については、

[1] 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる

[2] 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たり おおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる

とされています。

 なお、労災補償の問題以外に、使用者に対する損害賠償の問題もあります。

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■雑学:ポパーとウィトゲンシュタイン

FLN (Fujita Law News) 2004. 1.25 (No.4)からの転載です。

 20世紀を代表する哲学者であるカール・ポパーとルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、1946年10月25日の夜に、ケンブリッジ大学の一室で、一度だけ会いました。
 モラル・サイエンス・クラブの会合にゲスト・スピーカーとして招かれたポパーの話にウィトゲンシュタインが反発し、火かき棒を振り回し、約10分間の出来事の後、ウィトゲンシュタインが部屋から出て行ったと言われています。
 この火かき棒事件の真実はどうであったのかについて、昨年、面白い本が出版されました。

 デヴィッド・エドモンズ(David Edmonds)&ジョン・エーディナウ(John Eidinow)(二木麻里訳)
『ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い10分間の大激論の謎』
<原著:Wittgenstein's Poker ;The story of a ten-minute argument between two great philosophers, 2001>
(筑摩書房、2003年、\2,900(税別) )
です。
 著者は、イギリスのBBCに属する2人のジャーナリストで、原著発行後すぐに人文書のベストセラーリストに加わったそうです。

 カール・ポパー(森博訳)(原題:Unended Quest, An Intellectual Autobiography)
『果てしなき探求 -知的自伝』(岩波書店、1978年、当時\1,500)
173頁以下に、ポパーによる記述があります。しかし、どうも、ポパーの記述どおりではなさそうです。

 なお、昨年は、ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』が岩波文庫として刊行されました(野矢茂樹訳、岩波書店、2003年、\700(税別))。その「序」では、

「本書が全体としてもつ意義は、おおむね次のように要約されよう。およそ語られうることは明晰に語られうる。そして、論じえないことについては、ひとは沈黙せねばならない。」「本書に表された思想が真理であることは侵しがたく決定的であると思われる。それゆえ私は、問題はその本質において最終的に解決されたと考える。」

と述べられています。
 読もうと思っているのですが、理解が追いつかない感じです。

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■民事:ペットの飼主の責任

FLN (Fujita Law News) 2004. 1.25 (No.4)からの転載です。

 民法718条により、動物の占有者は、その占有する動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います。

 犬の占有者の責任に関する裁判例を調べましたが、従来は判例雑誌に掲載されることが少なかったようです。判例Masterという判例データベースで調べてみても、
 *大阪地裁昭和61年10月31日判決(判例タイムズ634号182頁)
ぐらいしか見つかりませんでした。

 しかし、昨年は、多くの事件が報道され、また、裁判所のサイトにも判決が掲載されることが多くなりました。
 例えば、以下の判決があります。

 *大阪地裁平成15年1月23日判決(民事、損害賠償約175万円)
 *田辺簡裁平成15年1月24日(まで)判決(刑事、罰金20万円)
 *東京地裁平成15年1月24日判決(民事、損害賠償約82万円)
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/Listview01/0D541F084ECB773349256CBF00344FB7/?OpenDocument
 *札幌簡裁平成15年1月29日判決(刑事、罰金8万円)
 *大阪地裁平成15年2月17日判決(民事、損害賠償約660万円)
 *名古屋地裁平成15年7月29日判決(刑事、懲役3年・執行猶予5年、犬没収)
 *名古屋高裁平成15年9月4日判決(民事、損害賠償額不明、過失相殺2割)
http://courtdomino2.courts.go.jp/Kshanrei.nsf/webview/E02501AFD08B6CF049256DDC00228ABF/?OpenDocument
 *広島高裁平成15年10月24日判決(民事、損害賠償40万円、過失相殺5割)
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/webview/2CA508D15D2CD3E249256E160030F02F/?OpenDocument

 これらのほかにも、逮捕・検挙についての報道がいくつもありました。
 犬の加害事件自体が増えているのか、あるいは、犬の加害事件自体は特に増えていないのに、関心を持たれる度合いが強くなってきているのかは、わかりません。
 ペットを飼っている人は、ペットの管理に注意をする必要が強くなってきていると言えるかも知れません。

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■雑学:小数点は、ピリオドかコンマか

FLN (Fujita Law News) 2004. 2.22 (No.5)からの転載です。

 私たち日本人は、123,456,789.01というように、小数点にピリオドを使い、3桁区切りにコンマ(カンマ)を使うことに慣れていると思いますが、アメリカ・イギリス以外の国では、これが逆の使い方であることが多いようです。私は、ごく最近まで、このことを知りませんでした。

 昨年10月に開催された第22回の国際度量衡総会(CGPM)で、アメリカなどは、小数点にピリオドを使うように決めたかったようですが、
symbol for the decimal marker shall be either the point on the line or the comma on the line,
と、ピリオドかコンマのいずれかを使うという決議になったようです
http://www1.bipm.org/utils/en/pdf/Resol22CGPM-EN.pdfのp.11参照

 これは、果たして、決めたことになるのでしょうかね。(^_^)

 なお、桁区切りについては、私は、今でも、4桁区切りの方がわかりやすいのですが、3桁区切りで全く違和感がない人が多くなっているのでしょうか。
 皆さんは、いかがでしょうか。

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■医療:日本産婦人科医会が事故報告と研修の義務化へ

FLN (Fujita Law News) 2004. 2.22 (No.5)からの転載です。

 毎日新聞の2月22日付報道
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20040222k0000m040095000c.html
によれば、
日本産婦人科医会(旧・日母:日本母性保護産婦人科医会、会員約1万2800人)は2月21日の理事会で、医療ミスを繰り返す「リピーター」医師を把握して再発防止を図るため、会員に対して、過失の有無を問わず事故の報告義務を課し、また、研修義務を課すことを決め、4月から実施するとのことです。義務違反等があると、会員としての除名や専門医の資格停止の処分を検討するとのことです。

 また、その報道によれば、産婦人科医は医師総数の約5%だが、診療科別の訴訟件数は全体の約12%と多く、被害補償のため医師が加入する日本医師会・医師賠償責任保険(日医・医賠責)の支払額では、産婦人科の事故が5割を占めているとのことで、医師会会員のうち責任を認めて日医・医賠責で4回以上賠償した悪質なリピーターは約30人いるが、大半は産婦人科医とのことです。

 自浄作用として歓迎したいと思います。そして、医学関係の各種学会も、事故報告義務と研修義務について制度化(違反の場合の処分を含む。)をするべきだと思います。
 ただし、任意団体である以上、除名等の処分が必ずしも実効性を持たない(除名等の処分を受けても医業を継続できる)ので、本来は、医師法によって制度化すべきであり、医道審議会の審議を経て厚生労働大臣が行う処分によって実効性を確保すべきでしょう。

 なお、医師等に対する処分については、

医道審議会医道分科会 平成14年12月13日
医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/12/s1213-6.html

によって改善が期待されるところですが、実際に良くなったという感じはまだないところです。

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April 30, 2004

■IT:青色LED訴訟の東京地裁判決に対する反応について

FLN (Fujita Law News) 2004. 2.22 (No.5)からの転載です。

 青色発光ダイオード(LED)訴訟で、
東京地裁平成16年1月30日判決
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/c617a99bb925a29449256795007fb7d1/857cf473624ccc5e49256e2b002f2054?OpenDocument
がありました。

 そして、200億円を認容した判決に対して、いろいろな反応がありました。
 新聞でも、多くの報道記事のほか、社説でもこの問題を取り上げたものが多かったです。
 しかし、それらの反応の中には、疑問を感じるものも多かったです。

 まず、認容額が200億円という巨額であったことから、過剰反応も多いようです。しかし、本件は、発明の価値、その独占利益の程度などの点で、極めて特殊な事例に属すると言うべきでしょう。青色LEDのような発明は、まず、滅多にはないものでしょうね。

 また、「経営無視の非常識判決」(北國新聞、2月6日付社説)など、企業経営を重視する立場からの反応もありますが、そもそも、会社に帰属する利益の額が1208億円と認定されているのですから、その認定について証拠に基づいて反論するならともかく、結果としての金額の大きさ自体を根拠として批判するのは正当ではないでしょう。つまり、会社が現に一定の利益を受けているという事実と、その事実の下での配分の仕方の問題とを区別して考える必要があるでしょう。

 そのほか、法律改正などにより発明対価の決定ルールを定めて、訴訟になりにくくするようにしようという動きがありますが、在職中の労働者は、どうしても使用者との関係で弱い面があり、適正な決定にならないことがありうるので、最終的に裁判所の判断によらざるをえない面が残るだろうと思います。

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■民事:示談屋

FLN (Fujita Law News) 2004. 2.22 (No.5)からの転載です。

 報道によれば、弁護士資格がないのにトラブルの和解などを行って報酬を受け取っていたとして、警視庁は2月10日、元プロボクサーの自称探偵業三沢容疑者(40)を弁護士法違反容疑で逮捕したとのことです。
 都内の繁華街の飲食店経営者などの間で「顧客を裏切らない示談屋」として知られ、7年間に約200人の依頼をこなし総額3億円近くの報酬を受け取っていたとのことです。

 別役実(劇作家)の著書に「当世・商売往来」(岩波新書・新赤版、1988年)という本があります。面白い本です。この中に「示談屋」という項目があります。一部を紹介します。

「示談屋というのは、すでに多くの人々に知られている弁護士と、そのニッチェ(生態的地位)を同じくするものであるがごとく一般には考えられているが、実は必ずしもそうではない。同様にいかがわしい商売と見なされている点では似ているものの、弁護士と違って示談屋は、何よりも国家に保護されていないのだ。」

「思い切って言わせてもらえば、弁護士が法律についての専門家なら、示談屋は人間についての専門家である。・・・。法律と人間を比較すれば、人間の方がはるかに複雑でかつ不条理であるように、弁護士の仕事より示談屋の仕事の方が、はるかに複雑でかつ不条理なのである。」

「私は、違いについて言っているのであって、優劣について言っているのではない・・・。当の示談屋も弁護士より優れているなどとは、決して考えていない。彼らは常に謙虚である。その証拠に、弁護士はその事務所にこれ見よがしの看板を掲げるが、示談屋でそうしているのを見たものは、誰もいない。弁護士は、依頼人がやってくるのを待っているのであり、示談屋は、依頼するであろう人のところへ、彼の方か
らやってくるのである。」

 なお、別役氏の著書としては、「当世病気道楽」「思いちがい辞典」「当世悪魔の辞典」「犯罪症候群」「虫づくし」「都市の鑑賞法」など、面白い本がいろいろありますね。

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■外国:アメリカのチーズバーガー法案

FLN (Fujita Law News) 2004. 3.27 (No.6)からの転載です。

 3月11日付や12日付の各紙の報道によれば、アメリカ合衆国の下院は、3月10日に、肥満の米国民がその原因をレストランや食品生産者のせいにするのを阻止する、いわゆる「チーズバーガー法案」を賛成276、反対139で可決したとのことです。

 上院でどうなるかわかりませんが、アメリカは、とにかく、いろいろな法律を作ろうとする傾向があるように思います。判例法の国と言われているのですが、制定法のウエイトも高いというべきでしょうか。

 そして、変な法律も多いようです。
Dumb Laws
http://www.dumblaws.com/
というサイトにたくさん載っています。

 ごく一部をアットランダムに転載しておきます。
Women may not drive in a house coat.(California)
You may not have an ice cream cone in your back pocket at any time.(Alabama)
No one may have sex in the back of an ambulance if it is responding to an emergency call.(Uta)
You may not tie an alligator to a fire hydrant. (Louisiana)

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■医療:質の向上と集約化、産科

FLN (Fujita Law News) 2004. 3.27 (No.6)からの転載です。

 読売新聞が3月10日に
健診は診療所 出産は病院(医療ルネサンス 安全で快適なお産)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/renai/20040310sr11.htm
 朝日新聞が3月12日に
産婦人科の役割分担 検診は医院、出産が病院で(安全な医療を求めて6)
という記事を掲載しました。

 質を上げるために集約化が必要であり、集約化によって(救急医療以外は)アクセスに要する時間が多少かかっても仕方がないと思っています。
 産科については、とにかく人手が必要な事態がありうるので、集約化すべきだし、すくなくともハイリスク妊娠の場合は、人手がある施設で行うようにしないといけないと思っています。

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■IT:個人情報、ヤフーBBの約460万人の顧客情報流出問題

FLN (Fujita Law News) 2004. 3.27 (No.6)からの転載です。

 ヤフーBBの約460万人の顧客情報流出問題は、流出ルートの解明が進んでいないとの報道がありました。
2004-03-22
ヤフーBB事件、流出ルートの解明進まず 個人情報流出
http://www.mainichi.co.jp/digital/coverstory/archive/200403/22/1.html

 この件では、2月に夕刊フジから電話があって、意見を言いました。コメントを載せるとは言っていなかったのですが、2月26日付の夕刊フジに以下の記載があったようです。
-----
 個人情報問題に詳しい藤田康幸弁護士は「今後、実害が出てくるようなケース
があり、被害者をまとめることができれば集団訴訟ということもありうる」と指
摘する。
-----

 セキュリティの問題、説明責任なども話したのですが、ごく一部だけを使ったみたいです。

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■IT:著作権、新聞記事の見出し

FLN (Fujita Law News) 2004. 3.27 (No.6)からの転載です。

 株式会社読売新聞東京本社(原告)が有限会社デジタルアライアンス(被告)に対して、被告の運営するホームページ上において,原告ホームページのホームページ上に掲出される記事見出し及びこれと類似する記事見出しの複製・使用の禁止、損害賠償などを求めていた訴訟で、東京地裁平成16年3月24日判決は、原告の請求を棄却しました。

 裁判所は、原告の挙げる本件見出しはいずれも創作的表現とは認められないこと、また、本件全証拠によっても、本件見出しが、記事で記載された事実と離れて格別の工夫が凝らされた表現が用いられていると認めることはできないから,本件見出しは著作物であるとはいえないなどとしました。
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/c617a99bb925a29449256795007fb7d1/01fc7e738030979f49256e62001e5b5c?OpenDocument
に全文が掲載されています。

 事実の伝達にすぎないものは著作物に該当しませんので(著作権法10条2項)、妥当な判断だと思います。

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■民事:離婚、調停

FLN (Fujita Law News) 2004. 3.27 (No.6)からの転載です。

 池内ひろ美(東京家族ラボなど主宰)さんと
http://www.ikeuchi.com/
町村泰貴(南山大学法学部教授)さん
http://member.nifty.ne.jp/matimura/index-j.html、
http://www.nanzan-u.ac.jp/~matimura/index-j.html
が、
勝てる!? 離婚調停(日本評論社、2004.1、1400円+税)
http://218.216.69.73/nippyo/books/bookinfo.asp?No=2279
<目次>
 第1章 あなたに調停が必要になるとき
 第2章 家裁にはどんな人がいるのか
 第3章 調停にのぞむ心構え
 第4章 調停のプレゼンと交渉術
 第5章 調停の申立てから進行まで
 第6章 弁護士のたのみ方、つきあい方
 第7章 調停委員とのやりとり
 第8章 調停はどのようにして終わるか
 第9章 調停にまつわるお金
という本を刊行されました。
 これまでにない本で、離婚調停にあたって有用だと思っています。
 今現在は担当事件で離婚事件はないのですが、今度離婚事件を受任したら、まず最初に読もうと思っています。

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■外国:シンガポールの裁判所、エレクトロニック・ファイリング

 シンガポールの裁判所では、エレクトロニック・ファイリング(電子的な書類提出)が進んでいるとのことなので、本年(2004年)4月に、視察に行ってきました。

http://www.supcourt.gov.sg/supcourt/public_jspfiles/policies.jsp
その中の、特に、
Part VII - The Technology Courts & Technology Chamber
http://www.supcourt.gov.sg/supcourt/upload/practicedirections/DOC251.pdf
Part VIIA - Electronic Filing and Service
http://www.supcourt.gov.sg/supcourt/upload/practicedirections/DOC258.pdf

http://app.supcourt.gov.sg/efile/lawyer/welcome_page.asp

などが参考資料です。

 小さい国だから新しい仕組みを作りやすいこと、使ってもらうために努力していること、自分で電子的提出ができない人のためにサービス・ビューローを設けていることなどわかりました。
 なお、もともと訴訟制度などが日本と異なっているので、問題となりそうな状況が日本とは異なっているようにも思いました。

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■雑学:「は」と「が」

 ある場で、助詞の「は」と「が」の違いが話題になりました。私は、強調の「は」、というイメージがあり、その趣旨で主張したのですが、「が」の方が強調の意味があるという説も強力に主張されました。

 後で、辞典を調べてみました。

★広辞苑

■は
□(係助詞) 体言・副詞・形容詞や助詞などを受け、物事を他と区別して取りあ
げ、その説明を下文に期待させて、下文をもひき立たせる。下文は終止形で終止
する。(この助詞は、主格・目的格・補格などの格の区別を示すものではない)
(1)他と区別して取り出していう意を表す。
・・・
(2)叙述の題目を提示する。
・・・

■が
□(格助詞)
(一)
(1)連体格を示す。体言を受けて、下の体言との所有・所属などの関係を示す。
・・・
(二)主格を示す。
(1)体言、活用語の連体形について主語を表す。(古くは下の用言が連体形、条件
句などで下に続く場合に多く用いた。院政期以後、終止形による言い切りを導く
ようになった) 
・・・
(2)希望・好悪・可能などの対象を表す。
・・・

★大辞林

■は
(係助)
・・・
(1)特に一つの物事をとりあげて提示する。
・・・
(2)題目を提示して、叙述の範囲をきめる。
・・・
(3)二つ以上の判断を対照的に示す。
・・・
(4)叙述を強める。
(ア)〔格助詞・副詞などに付いて〕意味や語勢を強める。
・・・
(イ)〔動詞・形容詞の連用形、および助詞「て・で」に付いて〕一続きの叙述の一部分を強調する。
・・・

■が
(格助)
体言および体言に相当するものに付く。
(1)主格を表す。古語では従属節の主格表現にのみ使用されたが、中世の頃より用法が広まり、一般に主格を表すのに用いられるようになる。
・・・
(2)希望・能力・好悪などの対象になるものを表す。
・・・

 私は、自説が支持されたと思っているのですが、どうですかね。
 用例によりますかね。

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■知財:著作権、デジタル・コンテンツ、「超流通」

 毎日新聞の4月28日付の記事として、以下がありました。

http://www.mainichi-msn.co.jp/it/coverstory/news/20040428org00m300112000c.html
「超流通」:デジタルホーム時代に欠かせぬ存在となるか

「デジタルホーム時代のコンテンツ流通と著作権保護のあり方において、「超流通」はひとつの流れとなっていきそうだ。」とのことです。
 たしかに、「デジタルホーム時代のコンテンツ流通と著作権保護のあり方」は大きな問題でしょうが、「超流通」がそれほどの流れになるのでしょうか。

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■民事:中間法人

 中間法人法は平成13年にできました。

 最近、有限責任中間法人と無限責任中間法人の違いなどについての相談があったので、以下のように回答しました。

 有限責任中間法人と無限責任中間法人とを比べた場合、有限責任中間法人では、社員が法人の債権者に対して責任を負いませんが、無限責任中間法人では、社員が法人の債権者に対して責任を負うというのが基本的な違いです。

 したがって、有限責任中間法人では第三者(取引等の相手方)を害する可能性が無限責任中間法人よりは強いため、設立手続などが少し厳格になっています。
 設立・運営は、有限責任中間法人が,おおむね有限会社に準じた仕組み、無限責任中間法人がおおむね合名会社に準じた仕組みとなっています。

 有限責任を重視されるのであれば、手続等の負担を覚悟して有限責任中間法人を選択することになると思います。
 無限責任中間法人のメリットは、第三者(取引等の相手方)の信用を得やすいということだと思います。

 なお、理事については、中間法人法の以下の条文により一定の責任を負う場合があります。

(有限責任中間法人に対する責任)
第四十七条  理事が第六十五条第二項又は第三項の規定に違反する基金の返還に関する議案を社員総会に提出したときは、当該理事は、有限責任中間法人に対し、連帯して、当該議案を承認する決議に基づき違法に返還された額を弁済する責めに任ずる。
2  理事が法令又は定款に違反する行為をしたときは、当該理事は、有限責任中間法人に対し、連帯して、当該行為により当該有限責任中間法人が受けた損害額を賠償する責めに任ずる。
3  第一項の議案の提出又は前項の行為をすることに同意した理事は、当該提出又は当該行為をしたものとみなす。
4  第一項又は第二項の理事の責任は、総社員の同意がなければ、免除することができない。

(第三者に対する責任)
第四十八条  理事がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該理事は、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償する責めに任ずる。
2  理事が第十四条第二項若しくは第七十四条第二項の申込用紙若しくは第五十九条第一項の書類に記載すべき重要な事項について虚偽の記載をし、又は虚偽の登記若しくは公告をしたときも、前項と同様とする。ただし、当該理事が当該記載、当該登記又は当該公告をするについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
3  前条第三項の規定は、前二項の場合について準用する。

 そのほか、以下のサイトが参考になると思います。

法務省:
中間法人制度Q&A
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji40.html
中間法人の設立手続
http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI41/minji41.html

総務省:
中間法人法(平成十三年六月十五日法律第四十九号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H13/H13HO049.html

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■雑学:わさびの効用

 刺身や寿司などを食べるときに、わさびは欠かせないものですが、わさびには殺菌効果などがあるんですね。
 サンフランシスコの鈴木淳司弁護士から聞いて知りました。

 ネットで調べたところ、例えば、以下のサイトがありました。

http://www.wasabiya.net/kennkou.htm

http://www2.odn.ne.jp/~caq18070/wasabi4.htm

http://www.shuzenji.com/endou/endou4.htm

http://www.iwami.or.jp/hish/html/wasabi_a.htm

 刺身や寿司などを食べるときに、わさびを見る眼が違ってきそうです。

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■医療:異状死の届出義務に関する最高裁判決

 医師法21条の異状死の届出義務について、4月13日に重要な最高裁判決が出ました。

 最高裁第三小法廷平成16年04月13日判決(平成15年(あ)第1560号 医師法違反,虚偽有印公文書作成,同行使被告事件)です。
http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/dc6df38c7aabdcb149256a6a00167303/8844c1f565ecb55349256e75001bfaf8?OpenDocument
に全文が掲載されています。

 「要旨」としては、以下の2点が記載されています。
 1 医師法21条にいう死体の「検案」とは,医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい,当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わない
 2 死体を検案して異状を認めた医師は,自己がその死因等につき診療行為における業務上過失致死等の罪責を問われるおそれがある場合にも,医師法21条の届出義務を負うとすることは,憲法38条1項に違反しない

 医師法21条違反に問われた医師の上告を棄却したわけですが、判決の「理由」の主な部分は、以下のとおりです。

-----
 1 弁護人高田利廣,同加藤雅明の上告趣意のうち,医師法21条の「検案」の解釈について,憲法31条違反,法令解釈の誤りをいう点について
 ・・・
 なお,所論にかんがみ職権で判断すると,医師法21条にいう死体の「検案」とは,医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい,当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わないと解するのが相当であり,これと同旨の原判断は正当として是認できる。
 2 同上告趣意のうち,医師法21条の適用につき憲法38条1項違反をいう点について
 所論は,死体を検案して異状を認めた医師は,その死因等につき診療行為における業務上過失致死等の罪責を問われるおそれがある場合にも,異状死体に関する医師法21条の届出義務(以下「本件届出義務」という。)を負うとした原判決の判断について,憲法38条1項違反を主張する。
 そこで検討すると,本件届出義務は,警察官が犯罪捜査の端緒を得ることを容易にするほか,場合によっては,警察官が緊急に被害の拡大防止措置を講ずるなどして社会防衛を図ることを可能にするという役割をも担った行政手続上の義務と解される。そして,異状死体は,人の死亡を伴う重い犯罪にかかわる可能性があるものであるから,上記のいずれの役割においても本件届出義務の公益上の必要性は高いというべきである。他方,憲法38条1項の法意は,何人も自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものと解されるところ(最高裁昭和27年(あ)第838号同32年2月20日大法廷判決・刑集11巻2号802頁参照),本件届出義務は,医師が,死体を検案して死因等に異状があると認めたときは,そのことを警察署に届け出るものであって,これにより,届出人と死体とのかかわり等,犯罪行為を構成する事項の供述までも強制されるものではない。また,医師免許は,人の生命を直接左右する診療行為を行う資格を付与するとともに,それに伴う社会的責務を課するものである。このような本件届出義務の性質,内容・程度及び医師という資格の特質と,本件届出義務に関する前記のような公益上の高度の必要性に照らすと,医師が,同義務の履行により,捜査機関に対し自己の犯罪が発覚する端緒を与えることにもなり得るなどの点で,一定の不利益を負う可能性があっても,それは,医師免許に付随する合理的根拠のある負担として許容されるものというべきである。
 以上によれば,死体を検案して異状を認めた医師は,自己がその死因等につき診療行為における業務上過失致死等の罪責を問われるおそれがある場合にも,本件届出義務を負うとすることは,憲法38条1項に違反するものではないと解するのが相当である。このように解すべきことは,当裁判所大法廷の判例(昭和27年(あ)第4223号同31年7月18日判決・刑集10巻7号1173頁,昭和29年(あ)第2777号同31年12月26日判決・刑集10巻12号1769頁,昭和35年(あ)第636号同37年5月2日判決・刑集16巻5号495頁,昭和44年(あ)第734号同47年11月22日判決・刑集26巻9号554頁)の趣旨に徴して明らかである。
・・・
 よって,同法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖)
-----

 この判決により、一部の論者から主張されていた違憲論は今後は終息するものと思われます。
 そして、医療事故(死亡事故)についての届出は促進されることが期待されます。

 なお、この最高裁判決の原審は、
東京高裁平成15年5月19日判決(平成13(う)2491 医師法違反,虚偽有印公文書作成,同行使被告事件)で、
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/WebView2/EE0BBB16DE4125DF49256E68002C4570/?OpenDocument
に掲載されています。

 この東京高裁判決では、

-----
被告人を懲役1年及び罰金2万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。
-----

とされていたのですが、この刑が確定したことになります。

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